天気雨
明るい空から雨が降る。傾きかけた日の光を浴びきらきら輝く雨粒は、畦道を進む花嫁行列を煌びやかに飾り立てた。黄金の稲穂は風に吹かれ、海原のように波打つ。歩みを進める一行の、足元を照らすのは鮮やかな緋。道の端に点々と、この日のために火を灯された花が咲く。雨に濡れても潰えない特別製、狐の嫁入りの為の狐花。
小さな幸福
高いヒールが、地面を蹴る。コツ、コツと響く高い音がくるりと跳ねては空気に溶けて消えていく。誰かと楽しく話すのも良いけれど、一人の時間だって案外悪くない。気が滅入る事の多い世の中でも、どれだけ口元を緩ませたって誰にも見つからないのは、割と、良いなぁ。お気に入りの曲を口ずさみながら夕焼けの中へと進んだ。
暇人